後日。
『だって最近ちっとも電話に出てくれなかっただろう不安だったんだよもしや孤独死しているんじゃないかと思って!』
「余計なお世話だ」
『それに君って、昔から若い男の子を侍らせていただろう?!』
「妙な言い方をするな!」
『そりゃあ僕だってもう70過ぎたお爺さんだから若い方が良い気持ちも分かるけど!』
「安心しろ、私もお前と同い年の爺さんだ」
『酷いじゃないかブルースー!』
「…人の話を全く聞いていないな、お前……」
『いやー、近頃ちょっと耳が遠くなってねー』
「嘘を吐け地獄耳が」
『君の鼓動くらいしか分からないよ』
「それだけ分かれば十分だ。…とにかくもうゴッサムに来るな。切るぞ」
『じゃあ君がメトロポリスに来てくれ』
「断る」
『やっぱり酷い!』
「お前こそ孫の面倒を放ってこっちへ来る気か?!」
『失礼だな、見なくても大丈夫な時に行ってるんだよ…ってブルース』
「…何だ」
『ひょっとして、あの、僕が孫持ちだからって遠慮して』
「切るぞ!」
『ブルースそんなに気を遣わなくても、息子達だって僕らに任せっきりじゃな』
がちゃん。
受話器が叩きつけられた音を聞き、ようやくテリーは振り返った。
レトロな電話の前には、荒い息を吐くブルースが立っている。
「なぁブルース、別に、オレに遠慮しなくてもさ」
「お前には関係ない」
「あっそ。…でも月1のデートくらいしてやれよ、聞いてて気の毒だ」
「テリー!」
「じゃ、パトロールして来るから!」
にやりとブルースに笑ってから、テリーはケイブへ繋がる部屋に飛び込んだ。
「どいつもこいつも……!」
そうぼやくブルースの顔は、心なしか赤く染まっていた。